過去の楓舎小屋便り

2024/2/23

138億年という時間

20204年2月 松の枝打ち

 ここ拓成町へ引っ越した頃に植えたとど松は、今までほったらかしでした。一度も枝払いをしないまま40年余りたってしまいました。今年になってふと見上げると「立派に」張った枝がジャングルのようにからみあい、周辺は薄暗く、まわりの木々を押さえつけているのでした。これはあまりの有り様と思い、辺りに影響を与えないほどの高さから枝を払うことにしました。しかし今や20メートルあまりに伸びた幹に昇っていくのは素手のままでは無理です。スポーツクライミング用のハーネスにカラビナと短い綱で、昔、木製の電柱に電気屋さんが昇って工事をしたように幹にまわして安全確保をすることにしました。チェンソーはエンジン付きでは危険すぎるし必要ないので、バッテリーでまわすミニチェンソーを腰にぶら下げ昇るのです。3メートルあまりのはしごをかけて取り付きます。どの枝も私の腕ほどにまで太くなり(直径およそ7〜8センチ)、充分私の体重を支えられます。1本目の樹では落とす予定の最上部の枝から順にを落としていったのですが、なにせ「立派に」そだっているので、上の枝を落としても細かな枝がからみ合って地面に落ちずに下の枝に引っかかります。時には周りの紅葉の木やコブシの木にまで引っかかります。引っ張って落とすにも抜けてくるものではありません。それほど密に葉が茂っています。松のあの針のような葉も、これだけ密になってかみあってしまうとまるでマジックテープのようなもんだな、と、感心してしまいました。どうすることもできないのでかまわず上から落としていきますと、下の枝になるほどちょっとチェンソーを当てるだけでバキバきっと折れていきます。これは楽できましたが、どきどきします。幹の近くに残った枝の付け根部分はきれいに切り落とします。すべて落としてから見ると、はしごの半分近くまでおとした枝が折り重なり、どうやって片付けようか途方に暮れそうでした。 二本目からは、下の枝から付け根部分を30〜40センチ残して足場とし、 残りはおとしていきました。今度はうまく順に地上に落ちてくれたのでした。

 ご存知の通り、松類の枝は竹の節のように下から上へ一定の間隔で幹の周りにぐるりと5〜6本の枝を放射状に出します。枝集団の上下の間隔はもちろん木によりますがほぼ40〜50センチですから、足場になる部分を残しながら上への枝上の枝と切り落としていけるのです。おもちゃのようなミニチェンソーはこうして枝をおとすのにまったくうまく働いてくれます。どこかの政治家ではありませんが、適材適所とはこのことです。

 こうして家の周りをなんだか薄暗くしていた松3本の枝をおとしました。先端にほんの少しだけ枝を残された松の姿は、遠目には何となくガウディの建築の雰囲気で面白いものです。松だけでなく、長く世話していなかったナラや他の果樹も枝を剪定しています。それにつけてもあんなに太くなった松の枝はひさしぶりです。薪として結構な量になりそうです。

枝を払った松

 こんな風に人生が過ぎていくなあと、この頃感じるのです。こんなに太い松の枝を見ると、ああこれが40年かと具体的な時間を知ることができます。しかし138億年なんかどう逆立ちしても実感することなどできません。ただ、私自身を含めた生物の微小な時間の繰り返しがこの宇宙をつくってきたのだろうし、これからもつくっていきます。そう考えると宇宙の「ちり」という実感はわいてきます。プーチンにもネタニヤフにも、こんな星で大声出していたって所詮宇宙のちりにすぎないんだよと教えてやりたいですね。むなしいことをしていると。

 

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